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アルコール使用障害:非ヒト霊長類の雄におけるアルコール使用障害に対するGDNF遺伝子治療

Nature Medicine 29, 8 doi: 10.1038/s41591-023-02463-9

アルコール使用障害(AUD)によって、世界中で個人的、社会的、経済的に莫大なコストが生じている。治療意欲のあるAUD患者が再びアルコール摂取を開始してしまうことはよくあり、現在利用可能な薬物療法を用いた場合でも、断酒と再飲酒のエピソードを繰り返す悪循環が引き起こされる。アルコール摂取が繰り返されることで、中脳辺縁系報酬経路の腹側被蓋野(VTA)ニューロンにおけるドーパミン作動性シグナル伝達に神経適応が誘導され、また、報酬回路の持続的な機能不全がアルコール摂取の再発に結び付くとされている。本研究では、この仮説を検討するため、ドーパミン作動性ニューロンの機能を増強する増殖因子であるヒトグリア由来神経栄養因子(hGDNF)をコードするアデノ随伴ウイルス血清型2ベクター(AAV2-hGDNF)を、4頭の雄のアカゲザルのVTAに注入し、また、別の4頭には溶媒(滅菌生食+造影剤)を投与して、その後に慢性的なアルコール摂取を誘導した。断酒–飲酒再開を繰り返す12カ月間にわたるチャレンジでは、GDNFの発現により、アルコール摂取行動に戻ることが大きく減少した。この行動変化は、側坐核でのドーパミンシグナル伝達に対する神経生理学的調節を伴って起こり、この調節は慢性的なアルコール摂取と関連するドーパミンシグナル伝達の低下状態を緩和することから、大脳辺縁系回路の治療的調節によってアルコールの影響が軽減されることを示している。これらの前臨床的な知見は、再飲酒予防を目的とした遺伝子治療がAUDの有望な治療戦略になる可能性を示唆している。

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