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CHIP:クローン性造血はアルツハイマー病に対する防御と関連する

Nature Medicine 29, 7 doi: 10.1038/s41591-023-02397-2

未確定の潜在能を持つクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)とは、特定の変異が存在する造血幹細胞が前がん性増殖を起こしていることである。CHIPに関連した変異が骨髄系細胞の増殖や機能を変化させることが知られている。そこで我々は、CHIPが、アルツハイマー病(AD、脳に常在する骨髄系細胞が重要な役割を果たしていると考えられている)の罹患リスクにも関連しているのではないかと仮定した。CHIPとAD型認知症の関連を検討するため、AD患者1362人とADではない4368人を対象に、血液試料のDNA塩基配列解読データを解析した。その結果、CHIP保有者は、保有者でない場合よりも、AD型認知症の罹患リスクが低い(メタ解析のオッズ比〔OR〕= 0.64、P = 3.8 × 10−5)ことが判明し、メンデル無作為化解析からこの因果関係の裏付けを得た。また、CHIP保有者8人のうち7人において、血液中で見つかった変異と同じ変異が、ミクログリアが豊富に含まれる脳の画分でも検出されることを確認した。さらに、6人のCHIP保有者の脳から単離した核に対して単一核クロマチン接近可能性プロファイリングを行ったところ、調べた試料のミクログリアプールの大半をCHIPの変異細胞が占めていることが明らかになった。機序についての知見を検証するにはさらなる研究が必要であるが、これらの結果は、CHIPがADの罹患リスクを低下させる役割を担っている可能性を示唆している。

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