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ニューロテクノロジー:脳卒中後の上肢不全麻痺に対する頸髄の硬膜外刺激

Nature Medicine 29, 3 doi: 10.1038/s41591-022-02202-6

脳卒中は、運動野から脊髄への下行性指令を中断する可能性があり、その結果として、腕と手に永久的な運動障害が起こることがある。しかし、そのような損傷の下方にあっても、運動を制御する脊髄回路は損傷を受けておらず、運動を回復させるニューロテクノロジーの標的となり得る。今回我々は、脳卒中後の慢性片麻痺の2人の被験者で、腕と手の運動制御を促す頸椎回路の電気刺激を用いたFIH(first-in-human)研究を行った結果を報告する(NCT04512690)。被験者には2本のリニアリードが背側硬膜外腔に29日間にわたって埋め込まれ、これらは脊椎根のC3からT1を標的として、腕と手の運動ニューロンの興奮を増強した。選択した接触子を介した連続的な刺激は、筋力(例えば、把持力+40% SCS01〔被験者1〕、+108% SCS02〔被験者2〕)、キネマティクス(例えば、速度+30%から+40%)および機能的動作を改善し、その結果、被験者は脊髄刺激なしでは不可能だった運動を行うことができるようになった。被験者は共に、これらの改善の一部を刺激がなくなっても保持しており、重大な有害事象は報告されなかった。この2人の被験者から安全性と有効性の最終評価を行うことはできないが、今回のデータは予備的とはいえ、脊髄刺激が脳卒中後の上肢回復のための支援的および回復的方法となるだろうことを示す有望な証拠である。

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