Perspective

がん治療:がんに対する全身的な生態学的介入

Nature Medicine 29, 1 doi: 10.1038/s41591-022-02193-4

がんの研究と治療は、歴史的に腫瘍細胞とその腫瘍微小環境に集中してきた。しかし、血管系、リンパ系と神経系は、腫瘍と宿主の間に長距離にわたる情報交換網を確立している。この情報交換は、宿主もしくは腸内微生物相に加えて、全身性神経内分泌回路、炎症誘発性回路や免疫回路などの構成要素により生成された代謝物によって仲介され、これら全てが分子レベルで定められた生物学的機構を介して悪性疾患の進行方向を規定している。さらに、老化や併存疾患、1つの薬剤の副作用を抑えるための別の薬剤の併用は、がん患者の発症、進行、治療応答に大きな影響を与える。このPerspectiveでは、悪性疾患の全身的な「生態学的」探索について論じる。宿主と腫瘍の複雑な関係に関する知識の蓄積によって、全身にわたる体系的な介入のための合理的戦略が形作られ、こうした介入が最終的にがん患者での病気の制御や生活の質を改善するだろうと我々は考えている。

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