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COVID-19:COVID-19パンデミックの心血管疾患の予防と管理への影響

Nature Medicine 29, 1 doi: 10.1038/s41591-022-02158-7

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が、心血管疾患(CVD)の予防と管理にどのように影響を及ぼしてきたのかは十分に解明されていない。本研究では、2018年4月から2021年7月までにイングランド、スコットランド、ウェールズの各地域で調剤されたCVD治療薬の13.2億件の記録を含む、定期的に収集されて匿名化された個人レベルのデータを用いることで、治療薬データをCVD管理のプロキシとした。本論文では、高血圧、高コレステロール血症および糖尿病に注目して、CVDに関連したいくつかの症状に関して調剤された一般的および偶発的な治療薬の月別の個数と、前年度と比較したパーセント変化について報告する。2020年3月から2021年7月までの期間には、高血圧治療薬の調剤回数の減少が観察され、治療を開始した人数は予測よりも49万1306人少なかった。もし治療が今後もずっと行われないとしたら、この減少の結果として、心筋梗塞2281症例および卒中3474症例を含む1万3662件のCVD事象が追加的に起こると予測された。脂質低下薬の偶発的な使用は、2019年と比較した場合、2021年上半期では1カ月当たり1万6744人の患者分が減少した。これとは対照的に、2型糖尿病治療薬(インスリン以外のもの)の偶発的な使用は、同じ期間に1カ月当たり約623人の患者分が増加した。この結果からすると、COVID-19パンデミックの間接的な影響として将来的に起こる過剰なCVD事象の多くを回避するためには、CVDリスク因子に対する治療機会を逃して未診断のままというケースを見つけ出して治療する方法が緊急に必要と考えられる。

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