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がん治療:進行性固形腫瘍と急性骨髄性白血病における酸化的リン酸化の複合体I阻害剤 ― 第I相試験

Nature Medicine 29, 1 doi: 10.1038/s41591-022-02103-8

酸化的リン酸化(OXPHOS)を標的とすることは、合理的な抗がん戦略だが、OXPHOS阻害剤の臨床効果はまだ成功に至っていない。今回我々は、複合体Iに対する非常に強力で選択的な小分子阻害剤であるIACS-010759について、再発性/難治性急性骨髄性白血病患者(NCT02882321、n = 17)と進行性固形腫瘍患者(NCT03291938、n = 23)を対象とする2つの用量漸増第I相試験を実施した。主要評価項目は、IACS-010759の安全性、忍容性、最大耐用量および第II相試験推奨用量(RP2D)とした。両方の臨床試験で副次評価項目として、患者でのIACS-010759のPK、PD、予備的抗腫瘍効果の評価も行った。IACS-010759の治療指数は狭く、血中乳酸値の上昇や神経毒性などの用量制限毒性が出現し、投薬を継続することに障害をきたした。その結果、RP2Dは設定されず、許容用量ではわずかなOXPHOS阻害と限定的な抗腫瘍活性しか見られず、試験は両方とも中止された。マウスでのリバーストランスレーショナル研究では、IACS-010759は末梢神経障害を示唆する行動変化と生理的変化を誘発し、これらはヒストンデアセチラーゼ6阻害剤の同時投与によって最小限に抑えられることが明らかになった。OXPHOS阻害と神経毒性の間の関連性を明らかにするには、さらなる研究が必要であり、抗腫瘍薬として複合体I阻害剤の開発を継続するには注意が必要である。

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