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多発性硬化症:進行型多発性硬化症患者での神経幹細胞移植 ─ 非盲検第1相試験

Nature Medicine 29, 1 doi: 10.1038/s41591-022-02097-3

進行型多発性硬化症(PMS)のための神経保護と免疫調節を組み合わせた革新的な再生促進治療戦略は緊急に必要とされているが、いまだに実現していない。多発性硬化症の動物モデルでは、移植された神経前駆細胞(NPC)は、栄養的支援や神経可塑性を維持する分子の放出により神経保護とミエリン再形成を促進して前臨床効果を示した。本論文では、ミラノ(イタリア)のサンラファエレ病院で実施された、前向き・治療探索的・非無作為化・非盲検・単回用量設定第1相臨床試験であるSTEMS(NCT03269071、EudraCT 2016-002020-86)の結果を報告する。STEMSでは、12人のPMS患者(疾患進行の証拠があり、総合障害度評価尺度 ≥ 6.5、年齢18~55歳、罹病期間2~20 年、承認された代替療法を受けていない)の髄腔内に移植されたヒト胎児NPC(hfNPC)について、治療の実施可能性、安全性、耐容性が評価された。安全性の主要評価項目は達成され、2年間の追跡調査ではhfNPCに関連する重篤な有害反応はなく、PMSでのhfNPC療法が実施可能であり、安全で耐容性があることが明確に実証された。探索的二次解析では、hfNPCを最高用量で投与された患者で脳萎縮の割合が低く、抗炎症分子および神経保護分子の脳脊髄液レベルの上昇が見られた。予備的ではあるが、これらの結果はさらに大規模な患者コホートでhfNPCを最高用量で用いる臨床研究を行うことの論理的根拠と価値を裏付けるものだ。

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