News Feature

輝きを失った学術界から産業界へ、研究者の流出が続く

Nature Medicine 29, 1 doi: 10.1038/s41591-022-02088-4

過酷な労働条件に耐え将来に不安を感じる若手研究者、また助成金の減少や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響により研究費を打ち切られたベテラン研究者などが続々と産業界へ移っている。ベンチャー企業や製薬会社では、やりがいのある独自の研究のチャンスや、より高い給与、良好でフレキシブルな職場環境が提供されるからだ。この大移動は、基礎科学から臨床試験までの研究環境を根本的に変え、医薬品開発のパイプラインを揺るがしかねない。大学での研究活動の問題点は、資金調達の圧力や管理上の重荷だけではなく、柔軟性が乏しいため研究方針の変更や新しいアイデアの追求が難しいことだ。これを食い止め、トランスレーショナル研究を支える基礎研究を維持するためには、資金提供の仕組みと研究組織を見直す必要がある。学術界と産業界間の研究者の移動が、才能ある人材の奪い合いではなく、実りあるパートナーシップを促進する健全な行き来となるような研究システムを作り上げるべきだ。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度