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遺伝子治療:小児β00輸血依存性βサラセミアでのCRISPR–Cas9によるBCL11Aエンハンサーの遺伝子編集

Nature Medicine 28, 8 doi: 10.1038/s41591-022-01906-z

+58 BCL11A赤血球特異的エンハンサーのGATA1結合部位を破壊する遺伝子編集は、γグロビンの発現を誘導でき、HBB遺伝子の変異によって起こるβヘモグロビン症を軽減する治療戦略として有望視されている。本研究では、輸血依存性βサラセミア(TDT)の小児患者での遺伝子編集治療の安全性と有効性を評価するために行われている現在進行中の第1/2相試験(NCT04211480)の予備的結果を報告する。我々はまず、BCL11Aエンハンサーを編集した自家造血幹・前駆細胞を2人の小児に移植した。その一人は、最も重症であるタイプのTDTに分類されるβ00遺伝子型を有している。主要評価項目は生着、全生存期間、有害事象(AE)の発生率とした。患者は二人とも、多系統細胞が生着して臨床的に良好な状態であった。また、これまでのところAEは全て遺伝子編集とは無関係と考えられ、治療後に解消した。副次評価項目は、輸血非依存性の達成、骨髄細胞での編集率、ヘモグロビン(Hb)濃度の変化とした。両方の患者で治療後18か月以上の輸血非依存性が達成され、Hbはそれぞれ、スクリーニング時の8.2 g dl−1と10.8 g dl−1から、最後の来院時には15.0 g dl−1と14.0 g dl−1に増加し、骨髄細胞での編集の持続はそれぞれ85.46%と89.48%だった。編集された末梢血単核細胞での単一細胞トランスクリプトームと挿入欠失(indel)パターンの探索的解析では、この治療による顕著な副作用は見られなかった。

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