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βサラセミア:強度減弱型前処置を行ったβサラセミア成人患者でのレンチウイルスグロビン遺伝子治療:第1相試験

Nature Medicine 28, 1 doi: 10.1038/s41591-021-01554-9

βサラセミアは遺伝性の貧血であり、ヘモグロビンβ鎖の産生が全く見られないか、もしくは不十分であることが原因である。今回我々は、4人の輸血依存性βサラセミア成人患者を6~8年間にわたって追跡した第1相臨床試験について報告する(NCT01639690)。この試験では、強度減弱型前処置(RIC)後に、TNS9.3.55レンチウイルスグロビンベクターを導入した自家CD34+細胞を患者に移植した。患者は、挿入変異誘発、複製能を持つレンチウイルスの生成(つまりRIC後に注入した細胞製剤の安全性と耐容性:主要評価項目)、遺伝学的に修飾した自家CD34+細胞の生着、導入したβグロビン遺伝子の発現、移植後の輸血の必要性(つまり有効性:副次評価項目)についてモニタリングされた。前処置と細胞製剤注入の期間中には、安全性に予想外の問題は起こらなかった。造血遺伝子の標識化は非常に安定だったが低レベルであり、輸血非依存性は達成されなかったものの、2人の患者では輸血の必要性が低下した。我々の知見は、非骨髄破壊的前処置では幹細胞の持続的な生着が達成可能だが、効果的な治療には最小限のCD34+細胞の形質導入が必要であることを示唆している。中程度のクローン増殖は、がん関連遺伝子近傍への挿入と関連付けられ、幹/前駆細胞でのグロビンベクターの非赤血球系の活性が考えられる。これらの互いに相関する知見は、グロビンベクターを保持した患者には注意深いモニタリングが必要であることを明確に示している。

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