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前立腺がん:致死的な前立腺がんでの治療抵抗性の転写メディエーター

Nature Medicine 27, 3 doi: 10.1038/s41591-021-01244-6

転移性の去勢抵抗性前立腺がんは一般に致死的で、第二世代のアンドロゲン標的療法に対して内因性または獲得性の抵抗性を示し、免疫チェックポイント阻害剤に対する応答も非常に小さい。がん細胞と免疫細胞の両方に存在して抵抗性を促進する細胞プログラムについては、まだほとんど分かっていない。今回我々は、進行性前立腺がん患者14人について、よく見られる転移部位全てを網羅した単一細胞トランスクリプトームを明らかにした。治療歴にかかわらず、腺がん細胞では複数のアンドロゲン受容体アイソフォームの広範囲にわたる共発現が見られ、アイソフォームにはアンドロゲン標的療法への抵抗性を仲介すると考えられている短縮型のものも含まれていた。エンザルタミドに対する抵抗性は、がん細胞固有の上皮間葉転換やトランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達と関連していた。また、小細胞がん細胞では、系統可塑性を促進する転写調節因子やHOXB5、HOXB6、NR1D2によって駆動される多様な発現プログラムが見られた。さらに、一部の患者では、エンザルタミド投与後にクローン増殖を起こした細胞傷害性CD8+ T細胞上に機能障害マーカーが高発現していた。以上により、ヒトの転移性去勢抵抗性前立腺がんに由来するがん細胞と免疫細胞の転写特性から、アンドロゲンシグナル伝達阻害を補完する治療法を開発するための基盤が明らかになった。

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