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パーキンソン病:特発性パーキンソン病患者の髄膜リンパ管ドレナージ障害

Nature Medicine 27, 3 doi: 10.1038/s41591-020-01198-1

アルツハイマー病やパーキンソン病(PD)のような神経変性疾患の病因には、髄膜リンパ管機能障害が関与することが、動物実験で示されている。しかしヒトでは、リンパ管機能障害のこのような役割を裏付ける直接的な証拠はまだない。今回我々は、ダイナミック造影磁気共鳴画像法(DCE-MRI)を用いて、認知機能が正常な対照群と特発性パーキンソン病(iPD)患者もしくは非定型パーキンソニズム(AP)患者で、髄膜リンパ管流の評価を行った。iPD患者では、上矢状静脈洞とS状静脈洞に沿った髄膜リンパ管(mLV)を通る流量の大幅な減少が見られ、AP患者と比べると、深い頸部リンパ節の灌流も著しく遅くなっていることが分かった。iPD患者もしくはAP患者と対照群の間には、mLVのサイズ(断面積)に大幅な違いは見られなかった。あらかじめ形成させたαシヌクレイン(α-syn)原繊維(フィブリル)を接種したマウスでは、α-syn病変の出現に続いて、髄膜リンパドレナージの速度低下、髄膜リンパ内皮細胞間の密着結合の消失、髄膜での炎症増加が起こった。さらに、あらかじめ形成させたα-synフィブリルを接種したマウスでmLVを介する流れを遮断すると、α-syn病変が増大し、運動障害と記憶障害が悪化した。これらの結果は、髄膜リンパドレナージの機能障害が、α-syn病変を悪化させ、PDの進行の一因となっていることを示唆している。

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