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インフルエンザワクチン:キメラヘマグルチニンを用いたユニバーサルインフルエンザウイルスワクチンは無作為化プラセボ対照第1相臨床試験で広範囲にわたる長期的免疫を誘導

Nature Medicine 27, 1 doi: 10.1038/s41591-020-1118-7

季節性インフルエンザウイルスは抗原連続変異を介して絶えず変化しており、パンデミック(世界的大流行)を引き起こすインフルエンザウイルスの抗原不連続変異を経ての出現は予測不能である。従来のインフルエンザウイルスワクチンは、ウイルスヘマグルチニンタンパク質の可変性で免疫優性の球状ヘッドドメインに対する株特異的な中和抗体を誘導する。そのため、ワクチンの再処方が頻繁に必要となり、これはパンデミックに対する備えに関して不利な条件となる。今回我々は、完了した評価者盲検無作為化プラセボ対照第I相臨床試験(NCT03300050)で、キメラヘマグルチニンを用いたワクチンの安全性と免疫原性を、米国の健康な18~39歳の成人で調べた。この研究では、ヘマグルチニンストークドメインに対する広範な交差反応性抗体を生じるワクチンの安全性と能力の検証を目的とした。参加者は以下の5つのグループ、すなわち弱毒化生ワクチン接種後にAS03アジュバント不活性化ワクチンを接種(n = 20)、弱毒化生ワクチン接種後に不活性化ワクチン接種(n = 15)、2回のAS03アジュバント不活性化ワクチン接種(n = 16)、プラセボ(経鼻投与後に筋肉内投与、n=5。2回の筋肉内投与、n = 10)に登録された。接種間隔は3か月である。ワクチン接種は安全であり、ヘマグルチニンの保存された免疫準優性(immunosubdominant)ストークを標的とする広範で強力、持続的、機能的な免疫応答を誘導することが分かった。この結果から、キメラヘマグルチニンは、複数のインフルエンザウイルスに対して広い保護効果を持つユニバーサルワクチンの開発につながると考えられる。

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