Article

深層学習:十分な医療を受けられない集団で見られる原因不明の疼痛格差を減らすためのアルゴリズムを使う方法

Nature Medicine 27, 1 doi: 10.1038/s41591-020-01192-7

十分な医療を受けられない集団では、経験する疼痛のレベルが高い。疼痛におけるこうした格差は、変形性関節症のような疾患の客観的重症度を調整した後にも解消されない。重症度は医師が医用画像を使って評価したものであり、十分な医療を受けられない患者の疼痛は、膝以外にある要因、つまりストレスなどによって起きている可能性が考えられる。今回我々は、変形性関節症の重症度を測定するのに深層学習の手法を導入し、膝のX線写真を使って患者が経験した疼痛を予測した。この方法は、疼痛における説明できない人種格差を大幅に低下させることが分かった。放射線科医によって段階付けされた重症度の標準的測定では、疼痛の人種格差の9%[95%信頼区間(CI)、3~16%]しか説明されなかったのに比べて、アルゴリズムを使った予測では、格差の43%、つまり4.7倍以上(95%CI、3.2~11.8倍)が説明され、低所得で教育水準の低い患者でも同様の結果が得られた。このことは、十分な医療を受けられない患者の疼痛の大部分が、重症度の標準的な放射線測定では反映されない膝内部の要因から生じていることを示唆している。また、この説明できない格差を低下させるアルゴリズムの能力は、トレーニングセットの人種的また社会経済的な多様性に起因することが明らかになった。アルゴリズムによる重症度の測定は、十分な医療を受けられない患者の疼痛をより適切に捉えており、また重症度の測定結果は治療法の決定に影響するため、関節形成術のような治療に対するアクセス性における格差はアルゴリズムを使う予測によって是正できる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度