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インフルエンザ:インフルエンザウイルスのヘマグルチニンストークに対する既存の免疫は、ヒト感染モデルで抗体回避変異体ウイルスの選択を促進する可能性がある

Nature Medicine 26, 8 doi: 10.1038/s41591-020-0937-x

インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)ストーク(あるいはステム)の保存されている領域は、ユニバー サルインフルエンザワクチンの有力な標的として注目されている。HAストーク領域は比較的よく保存されているが、インフルエンザウイルスの進化的に活発な性質によって、十分な免疫圧下でストークエスケープ変異を持つウイルスが出現する可能性が懸念されている。今回我々は、HAストークへの免疫圧がエスケープ変異ウイルスの増殖につながり得ることを示す。この研究では、参加者は2009年H1N1パンデミックのインフルエンザウイルス接種原でHAストークにA388V多型を含む(野生型の45%、変異体の55%)ものを接種された。ストークに対する抗体価のレベルが高いことは、ヒトおよびin vitroの両方で、変異ウイルスの選択と関連していた。変異ウイルスは、マウスでの複製速度にわずかな低下が見られたが、細胞培養やフェレット、チャレンジ感染参加者ではこの低下は観察されなかった。A388V変異は、強力なHAストーク広範囲中和性モノクローナル抗体(bNAb)の一部に対する抵抗性を付与した。bNAbもしくはヒト血清存在下で野生型ウイルスと変異ウイルスを共培養すると、変異ウイルスが急速に増殖した。これらのデータは、HAストークを標的とするユニバーサルインフルエンザワクチンの成功に対する障害となり得る事象、すなわち、ワクチンによって誘導される対ストーク免疫からのウイルス回避の可能性を明確に示している。

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