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急性肝不全:急性肝不全はMYCとマイクロバイオームに依存するプログラムによって調節される

Nature Medicine 26, 12 doi: 10.1038/s41591-020-1102-2

急性肝不全(ALF)は複数の病因による劇症型合併症であり、急速な肝損傷、多臓器不全と死亡を特徴とする。ALFの主な治療法は支持療法や肝移植に限られている。今回我々はアセトアミノフェン(APAP)とチオアセトアミド(TAA)を使って作製したALFモデルを用いて、5万6527 個の細胞の単一細胞トランスクリプトームの特徴を調べ、マウスALFの構成細胞アトラスを明らかにした。独特でこれまで性質が調べられていない星細胞、内皮細胞、クッパー細胞、単球と好中球のサブセット群、さらにこれらの細胞間の複雑なクロストークが、ALF発症を進めることが分かった。ALFの際に星細胞、内皮細胞、クッパー細胞の活性化を統合しているMYC依存性の転写プログラムが明らかになり、この転写プログラムがToll様受容体(TLR)シグナル伝達を介して腸内マイクロバイオームによって調節されていることも判明した。MYCとMYC上流のTLRシグナル伝達チェックポイントの薬理学的阻害、あるいはマイクロバイオームの枯渇は、この細胞特異的でMYC依存性のプログラムを抑制し、その結果としてALFが緩和した。ヒトでは、ALFで肝移植を受けたレシピエントでの肝臓のMYC発現が、健常なドナーに比べて盛んであることが実証された。まとめると、細胞レベルおよび遺伝学的レベルでの詳細な解明が経路特異的なALFの治療介入を可能にすると考えられる。

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