Letter

公衆衛生:医療施設までの移動時間を示した地球地図

Nature Medicine 26, 12 doi: 10.1038/s41591-020-1059-1

医療を受ける機会は、生活の安定や充足に必須である。だが、こうした機会が制約される場合があり、その一因は、ヘルスケア資源の配分が人口の地理的な分散に比例していることによる。医療施設に関する包括的なデータベースがないため、全球規模で医療へのアクセス度を定量化することは難しい。我々は、オープンストリートマップとグーグルマップ、そして大学の研究者により現在行われている大規模なデータ収集の取り組みを利用して、医療施設のこれまでで最も完全に近い位置情報をまとめた。我々の医療施設データセットではデータの質が地域によって異なることを活用し、我々はすでに確立されている方法を用いて、医療施設までの移動時間をこれまでにない詳細さで調べ上げた。車移動が可能な場合と不可能な場合について移動の所要時間地図を作成し、裕福度が大きく変化する集団での、医療施設への移動時間を特徴付けた。その結果、世界人口の実に8.9%(6億4600万人)は、車移動が可能であっても1時間以内に医療施設に到着できず、43.3%(31億6000万人)は、徒歩で1時間以内に医療施設へ到着できないことが分かった。我々の地図は、辺地に住む貧しい人々が直面しているさらなる脆弱性を明確に示しており、このような地域の住人が必要なときに医療施設を探そうとするかどうかを推定するのに役立つだろう。また今回の結果は、十分なサービスを受けられていない集団に対して限られた医療資源や輸送資源を、現在および将来的に効率よく配分する際の基礎となる証拠も示している。

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