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腸内微生物相/老化:早老症マウスでの糞便微生物相の移植による健康寿命と個体寿命の延長

Nature Medicine 25, 8 doi: 10.1038/s41591-019-0504-5

腸マイクロバイオームは、代謝、免疫、神経内分泌に関わる複数の経路で重要な調節因子として働いていることが明らかになりつつある。腸マイクロバイオームの脱調節は、肥満や2型糖尿病、心血管疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患やがんなどの重要な疾患に関連することが示されているが、老化におけるその役割の詳細はまだ解明されていない。今回我々は、早老症の2種類のマウスモデルが、プロテオバクテリアやシアノバクテリアの存在量増加とヴェルコミクロビア門(Verrucomicrobia)細菌の存在量低下などの変化を伴うディスバイオーシスという特徴を持つことを見いだした。これらの知見と一致して、ヒト早老症患者の腸でもディスバイオーシスが見られ、長寿者(100歳以上)ではヴェルコミクロビア門細菌のかなりの増加と、プロテオバクテリアの減少が見られることが分かった。野生型マウス由来の糞便微生物相の移植は、この2種類の早老症マウスモデルの両方で健康寿命と個体寿命を延長し、ヴェルコミクロビア門細菌の一種であるAkkermansia muciniphilaの移植は、それだけで有益な効果を発揮した。さらに、回腸内容物のメタボローム解析では、二次胆汁酸の回復が健全なマイクロバイオーム再樹立の有益な影響をもたらす機構である可能性が示された。我々の結果は、加速された老化関連ディスバイオーシスの修正は有益であることを実証するもので、老化と腸内微生物相の間につながりがあることを示唆しており、これは老化関連疾患へのマイクロバイオームを用いる介入の論理的根拠を提供するものである。

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