Letter

がん治療/免疫療法:抗GITRを用いる併用免疫療法の論理的デザイン

Nature Medicine 25, 5 doi: 10.1038/s41591-019-0420-8

チェックポイント阻害によるT細胞恒常性機構の調節は、内在性の抗腫瘍T細胞応答を効率よく促進することができる。しかし、多くの患者でチェックポイント阻害がいまだに効果を発揮していないことは、別の免疫経路を標的とする治療法の必要性を明確に示している。GITR(glucocorticoid-induced tumor necrosis factor receptor-related protein)は、エフェクターT細胞(Teff)機能を促進し、制御性T細胞(Treg)の抑制を妨げる機能を持つため、免疫療法の標的として関心を集めている。我々および他の研究グループが報告した、アゴニスト作用のある抗GITR抗体の前臨床での強力な抗腫瘍活性に基づいて、我々は抗GITR抗体TRX518を用いたGITR刺激のFIH(first in-human)第I相試験(NCT01239134)を開始した。本論文では、進行がん患者でのTRX518単独療法の安全性プロファイルと免疫効果について報告し、将来の臨床試験でGITR刺激とチェックポイント阻害とを論理的に組み合わせるために前臨床試験で得られた機構的証拠を示す。TRX518が循環血内と腫瘍内のTreg細胞を同じ程度まで減少させることが明らかになり、これは抗GITR活性の容易に評価できるバイオマーカーとなる。Tregの減少とTeff:Treg比の上昇にもかかわらず、実質的な臨床応答は認められなかった。これと同じく、進行がんを有するマウスでは、GITR刺激は傷害性T細胞を活性化するのに十分ではなく、これは持続的な疲弊が原因である。進行腫瘍の抗GITR単剤療法に対する抵抗性は、PD-1阻害によるT細胞の再活性化によって克服できることが分かった。これらの知見によって、我々は進行した難治性腫瘍の患者でTRX518投与をPD-1経路阻害と共に行う試み(NCT02628574)を検討している。

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