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再生医療:多能性幹細胞を用いた条件付き胚盤胞補完法による、機能を備えた肺の作製

Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0635-8

末期の難治性肺疾患による死亡者の数は世界で数百万人に及ぶが、それは治療選択肢が十分ではなく、肺移植のためのドナー臓器の利用可能性が限られているためである。肺再生のための現在の生体工学的戦略では、生命を維持するガス交換に必要不可欠で極めて多様性の高い肺細胞や、複雑な三次元構造が再現できなかった。本論文では、マウスで条件付きの胚盤胞補完(CBC)の手法を用いることで、機能を備えた肺の作製に成功したことを報告する。この方法は、キメラ宿主マウスの特定のニッチを空にすることでドナーマウスの多能性幹細胞(PSC)による器官形成開始を可能にするものである。肺に特異化できない(Ctnnb1cnull変異のため)、もしくは初期の呼吸器内胚葉前駆細胞が増殖できない(Fgfr2cnull変異のため)遺伝学的異常を持つレシピエントマウス胚で、野生型ドナーPSCは肺形成を救済できることが示された。救済された新生仔は成体期にまで生存し、その肺の機能は野生型同腹仔と区別できなかった。効率のよいキメラ形成と肺の補完には、ドナーPSCの発生能を維持させ、DNAの全体的な低メチル化やヒストンH4アセチル化の上昇に関連する、新たに開発された培養条件が必要である。これらの結果は、ヒトの肺疾患のモデル化と細胞ベースの治療的介入を可能にする大動物肺作製のための新しい戦略開発への道を開く。

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