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本当に「メッセンジャー」

Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0183-7

テーラーメイドの合成mRNAを患者に投与してワクチンや治療薬を作らせるという発想は、1990年代からあった。医薬としてのmRNAは、いくつかの点でDNAより優っていると見られている。例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)をコードするmRNAを心臓発作を起こした直後の心筋に注射すれば、血流量と酸素レベルが上昇し、心臓の損傷が防がれる。mRNAは細胞質内に入れるだけでよく、細胞内に長時間滞在しないし、DNAのようにゲノムに組み込まれるリスクも心配しないでいい。mRNAの生体内での安定性や免疫原性といった問題はあるが、ワクチンを中心として、タンパク質補充療法や抗体療法などへのmRNAの応用も盛んに研究されており、この分野への期待は大きい。また、mRNAを使う手法はCRISPR-Cas薬にも応用可能だと考えられており、Casタンパク質を核内に送達する方法を探すよりも、CasをコードするmRNAを設計する方が容易と見て、複数の製薬会社が試みている。mRNA薬が期待に応えるだけのものであるかどうかが明らかになるにはあと数年はかかりそうだが、この分野が右肩上がりであることは間違いない。

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