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血栓症:腸内微生物を標的とした、血栓症の可能性を抑えるための非致死性治療薬の開発

Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0128-1

トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)は腸内微生物相由来の代謝産物で、血小板の反応性と動物モデルでのin vivo血栓形成能の両方を増強する。また、血漿中のTMAOレベルは、ヒトの臨床研究で、アテローム血栓性の事象が起こるリスクを予測する。TMAOは、トリメチルアミン(TMA)を含む栄養素(西洋食に豊富)の腸内微生物に依存した代謝によって形成される。今回我々は、中間代謝物が酵素タンパク質を不活性化するMBI(mechanism-based inhibition)の手法を使って、微生物の主要なTMA生成酵素対であるCutCおよびCutD(CutC/D)を標的とする、強力で時間に依存し不可逆的に作用して、常在菌の生存には影響を与えない阻害剤を開発した。動物モデルでは、CutC/D阻害剤は単回の経口投与量で、最長3日間にわたって血漿TMAOレベルを大幅に低下させ、食餌によって誘導された血小板反応性の上昇および血栓形成の増大を解消したが、毒性は見られず、出血リスクの上昇も起こらなかった。この阻害剤は、治療効果が見られるのに必要とされる濃度よりも100万倍以上高いミリモル濃度で、腸内微生物中に選択的に蓄積した。これらの結果は、腸内微生物によるTMAとTMAOの産生をMBI方式で阻害すると、心疾患での重大な有害合併症である血栓症の可能性が低下することを明らかにしている。これらの結果はまた、阻害剤による宿主の全身曝露を制限しながら、宿主の疾患と関連する腸内微生物性酵素を選択的に非致死的に標的化するための一般化可能な手法を提案している。

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