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2017年を振り返る

Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm1217-1386

本誌恒例の年末特集では、まず「今年のニュースメーカー」を選び出した。トランプ大統領のHIV・AIDS撲滅の動きを軽視する態度に抗議して一斉辞職をした大統領諮問機関のメンバーから、遺伝子編集技術CRISPR–Cas9の特許を巡る紛争の解決などに取り組んだ米国特許商標局まで、その多くは注目に値する決断を下したことで話題になった人々や機関である。医学研究では今年も、型破りな思考によって問題の解明に成功したり、画期的な薬剤標的を見つけ出したりした研究が数多く発表された。Notable advances 2017では、今年特に注目を集めた論文を、がんの免疫療法、神経生物学、再生医療、心血管疾患、代謝、遺伝子編集技術、それに微生物学という分野から選び出し、関連する主要な研究論文を含めて、研究の経緯と成果を要約し、将来期待される進展についてもコメントしている(p. 1387)。今年はまた、科学を支持する世界規模のデモ行進から、職場での多様性やジェンダーの平等への関心の高まりまで、行動主義と社会的信条の表明が盛んになった年だった。Timeline of eventsは、1月のトランプ大統領就任後の科学技術政策の大きな変化、それに対して4月に行われたトランプ政権への抗議デモ「March for Science」など、科学界を揺さぶった出来事を月ごとに選び出し、要約したものである(p. 1390)。2117年は抗がん剤が再び脚光を浴び、ニュースにたびたび登場した。その多くは初めて認可を受けた種類の薬剤だったため、画期的な効果が期待され、大きく取り上げられた。がん関連以外では、炎症疾患の治療薬も成功と失敗の両方で注目を集めた。すでに市販が認可されていたり、これからの成功が見込まれて勢いに乗る薬剤としては、アトピー性皮膚炎治療の新しい選択肢となったDupixent(dupilumab)や、難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の治療薬Kymriahなどがある。だが、抗PD-1薬のKeytruda(pembrolizumab)のように、認可はされたが、がんの種類によっては臨床試験の結果が依然として思わしくないものや、萎縮型加齢黄斑変性の治療薬候補のLampalizumabのように複数の臨床試験で成果が上がらず、開発が中断されたものもあり、軽度から中程度のアルツハイマー病の治療薬として名乗りを上げたVerubecestatは有効性が見られないことで臨床試験が中止された。Drugs that made headlines in 2017では、話題になった複数の薬剤を取り上げてその現況を解析・評価し、赤、黄、青の信号のどれが点灯するか、分類している(p. 1392)。

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