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炎症:CARD9は腸内微生物相によるトリプトファンの芳香族炭化水素受容体リガンドへの代謝を変化させることで大腸炎に影響を及ぼす

Nature Medicine 22, 6 doi: 10.1038/nm.4102

宿主と腸内微生物相の間の複雑な相互作用は腸の恒常性を左右しているが、こうした相互作用についてはよく分かっていない。CARD9(caspase recruitment domain family member 9)は炎症性腸疾患(IBD)の感受性遺伝子で、微生物に対する免疫応答で機能している。今回我々は、腸内微生物相とCARD9の間の関係を明らかにした。CARD9は、インターロイキン22(IL-22)の産生を促進することで大腸炎からの回復を促進する。またCard9−/ −マウスは大腸炎に罹患しやすくなる。Card9−/−マウスでは微生物相が変化しており、Card9−/−マウス由来の微生物相を野生型の無菌レシピエントマウスに移植すると大腸炎への感受性が上昇する。Card9−/−マウス由来の微生物相は、トリプトファンを芳香族炭化水素受容体(AHR)リガンドとして機能する代謝産物に代謝できない。トリプトファンを代謝できる3種のラクトバチルス(Lactobacillus)株の接種、あるいはAHRアゴニストの投与によって腸の炎症は軽減する。AHRリガンドの産生低下はIBD患者由来の微生物相でも観察され、IBDに関連するCARD9リスク対立遺伝子を持つ患者では特に低下が著しかった。今回の知見は、宿主の遺伝子が腸内微生物相の構成や機能に影響を及ぼし、微生物代謝産物の産生や腸炎症を変化させていることを明らかにしている。

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