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白血病:スプライソソームタンパク質をコードする遺伝子に変異がある白血病の治療のためのスプライシング触媒作用の調整

Nature Medicine 22, 6 doi: 10.1038/nm.4097

スプライシングに関わる因子をコードしている複数の遺伝子(ここではスプライソソーム遺伝子と呼ぶ)の変異は、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)の患者で広く見られる。こうした変異は特定のアミノ酸残基に頻発し、本来のスプライス部位やエキソン認識を不安定化する。スプライソソーム遺伝子の変異は常にヘテロ接合性であって、同時発生することはまれであり、このことは細胞が正常なスプライシング活性からの部分的な逸脱しか許容しない可能性を示唆している。この仮説を検証するために、我々はマウスで遺伝子操作を行い、SRSF2(serine/arginine-rich splicing factor 2)遺伝子の、MDSやAMLの患者に一般的に見られる変異型対立遺伝子Srsf2P95Hを、造血細胞で誘導可能なヘミ接合性という形で発現させた。このマウスは、致命的な骨髄不全のためにすぐに死亡し、Srsf2変異細胞の生存は野生型Srsf2対立遺伝子に依存していることが実証された。白血病状態では、スプライソソーム阻害剤E7107を投与すると白血病による負担はかなり低減し、特に同質遺伝子系統のマウスの白血病やスプライソソーム変異を持つ患者由来の異種移植片AMLでそれが著しかった。マウスにE7107を投与した場合は、Srsf2の遺伝子型にかかわらず、広範囲にわたるイントロン保持やカセットエキソンスキッピングが生じたが、E7107投与後のスプライシング阻害の程度は、Srsf2が野生型である白血病よりも変異型である白血病の場合のほうが大きく、これはE7107の生存に対する効果の差と一致していた。まとめると、今回のデータは、スプライソソーム遺伝子に変異がある白血病では、このような変異のない白血病と比べて、in vivoでさらなるスプライシング異常を生じやすいことの遺伝学的また薬理学的な証拠を与えるものである。従って、スプライソソーム機能の調整は、遺伝的特性が明確にされたMDSもしくはAML患者に対する新たな治療手段となるかもしれない。

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