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精神神経疾患:外側手綱核でのGABABおよびGIRKの機能をプロテインホスファターゼ2A阻害によって回復させると、マウスではうつ様表現型が軽減される

Nature Medicine 22, 3 doi: 10.1038/nm.4037

外側手綱核(LHb)は忌避シグナルを符号化していて、その活性異常はうつ様症状の一因となる。しかし、LHbの活動亢進の基盤となる細胞機構は十分に解明されておらず、それがうつ様表現型を改善する薬理学的戦略の開発を妨げている。今回我々は、マウスではフットショック曝露のような嫌悪経験が、LHbニューロンの活動亢進とうつ様症状を引き起こすことを報告する。これは、GABAB受容体(GABABR)とGタンパク質依存性内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルの細胞表面発現の調節因子であることが知られているプロテインホスファターゼ2A(PP2A)の活性上昇とともに起こる。従って、フットショック曝露はGABAB1とGIRK2のインターナリゼーションを引き起こし、それがGABABにより活性化されGIRKが介在する(GABAB-GIRK)電流の急速で持続的な減弱につながる。PP2Aを薬理学的に阻害すると、GABAB-GIRK機能と神経の興奮性の両方が回復する。つまり、PP2A阻害はフットショック曝露後のうつ様症状や学習性無力感うつ病モデルでのうつ様症状を軽減する。従って、LHbでのGABAB-GIRK機能の可塑性が嫌悪経験の細胞基盤にあたると考えられる。また、PP2A阻害によるこの機能の回復は、LHb活動亢進を特徴とする疾患のうつ症状を軽減する新たな治療手段となる可能性がある。

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