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がん:タンパク質恒常性因子AIRAPLの喪失はIGF-1シグナル伝達の脱制御により骨髄の形質転換を引き起こす

Nature Medicine 22, 1 doi: 10.1038/nm.4013

AIRAPL(arsenite-inducible RNA-associated protein-like)は、細胞内タンパク質恒常性(proteostasis)の調節因子で、進化の過程で保存されてきた。線虫ではAIRAPLは長寿命と関連づけられているが、哺乳類での生物学的機能は知られていない。本論文では、AIRAPLを欠損するマウスでは完全浸透性の骨髄増殖性腫瘍形成過程が進展することを示す。AIRAPL欠損マウスでのプロテオーム解析から、このタンパク質がインスリン/インスリン様増殖因子1(IGF-1)シグナル伝達経路の調節を介して、抗腫瘍形成能を発揮することが分かった。AIRAPLは、新たに合成されたインスリン関連増殖因子1受容体(IGF1R)のポリペプチド鎖と結合し、このペプチドのユビキチン化とプロテアソームによる分解を促進することが示された。従って、IGF1Rの遺伝学的および薬理学的阻害という方法は、AIRAPL欠損マウスやJak2V617F変異を持つマウスで見られる血液疾患の発症を防止する。この結果は、この経路が骨髄増殖性腫瘍の病因に関わっていることを示している。AIRAPLは骨髄形質転換における腫瘍抑制因子としての役割を持つと考えられるが、それと一致して、ヒトの骨髄増殖性疾患ではAIRAPLの発現が広範囲にわたって停止している。まとめると、今回の知見は造血系細胞でのタンパク質恒常性の脱制御と発がんとの関連を裏付けており、またこのようなよく見られる造血系腫瘍に対する新規な治療標的を明らかにしている。

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