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炎症:ケトン代謝物であるβ-ヒドロキシ酪酸はNLRP3インフラマソームを介する炎症性疾患を抑制する

Nature Medicine 21, 3 doi: 10.1038/nm.3804

ケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)とアセト酢酸(AcAc)は、エネルギー欠乏時にATPの代替供給源となることで、哺乳類の生存を助ける。BHBの量は、飢餓やカロリー制限、激しい運動、あるいは炭水化物量の少ないケト原性食によって増加する。長期にわたる絶食は炎症を抑制するが、エネルギー欠乏時に産生されるケトン体などの代替的代謝エネルギー源が自然免疫応答に及ぼす影響については明らかになっていない。BHBは尿酸結晶やATP、脂肪毒性のある脂肪酸に応じて起こるNLRP3インフラマソーム活性化を抑制するが、AcAcや構造的に近縁の短鎖脂肪酸である酪酸や酢酸ではこうした抑制が見られないことが分かった。BHBは、NLRC4(NLR family, CARD domain containing 4)やAIM2(absent in melanoma 2)インフラマソームを活性化する病原体に応じて起こるカスパーゼ1活性化は阻害しなかったし、非定型的なカスパーゼ11によるインフラマソーム活性化にも影響を及ぼさなかった。抑制の機序として、BHBはカリウムイオン流出を妨げ、ASCのオリゴマー化やスペック形成を低下させることでNLRP3インフラマソームを阻害する。BHBがNLRP3に及ぼす阻害効果は、そのキラリティーには依存せず、またAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)や活性酸素種(ROS)、オートファジーあるいは解糖系阻害のような、飢餓によって調節される機序にも依存しない。BHBはクエン酸回路で酸化を受けることなくNLRP3インフラマソームを阻害し、脱共役タンパク質2(UCP2)やサーチュイン2(SIRT2)、Gタンパク質共役受容体であるGPR109A(別名HCAR2)に非依存的である。BHBは、ヒト単球でNLRP3インフラマソームが仲介するインターロイキン1βやIL-18の産生を抑制する。in vivoでは、マックル・ウェルズ症候群や家族性寒冷自己炎症症候群、尿酸結晶による腹膜炎などのNLRP3を介する疾患のマウスモデルで、BHBやケト原性食はカスパーゼ1活性化やIL-1β分泌を抑制する。今回の結果は、カロリー制限あるいはケト原性食の抗炎症効果が、BHBによるNLRP3インフラマソームの阻害と関連している可能性を示唆している。

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