Editorial

老化:不可避なことを避けるための努力

Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.4009

老化はヒトに本来備わっている生物学的性質だと広く考えられているが、それは多様な慢性疾患の最大のリスク要因でもあり、ますます高い関心を集めている。時の流れを止めることはできない。だが、モデル生物で行われてきた膨大な研究から、加齢に伴う健康の衰えを遅らせることは可能かもしれないと考えられるようになった。Nature Medicineはこの秋、フォルクスワーゲン財団と共にドイツで老化と老化関連疾患に関する会議を開催した。それに続いて、今月号では老化に関する特集を掲載している。Reviewsでは老化過程に関わる多様な経路(p. 1424)と代謝による調節(p. 1416)が取り上げられており、Perspectivesではプロテオスタシスと老化の関係(p. 1406)がまとめられている。健康寿命を延長することを狙った治療法に関する臨床研究に関しては、この分野に独特のいくつかの難問が論じられている(p. 1395)。しかし既存薬の転用など、見通しは決して暗いものではなく、免疫機能を増強するという考えも概念検証段階に入っているようだ。Perspectivesではこうした問題についても取り上げている(p. 1400)。老化と老化関連疾患に関わる因子の解明は、大変な難問である。環境因子も考慮に入れた上でヒトの不均一性を正しくモデル化できれば、ヒトの病気の発症を遅らせることが可能になるかもしれない。技術の進歩と革新によって、老化研究はさまざまな難問を乗り越えることができるだろう。

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