Technical Report

ゲノミクス:非コードGWASバリアントの機能を確定するためのエピゲノム編集およびゲノム編集のパイプラインとなる「CAUSEL」

Nature Medicine 21, 11 doi: 10.1038/nm.3975

ゲノム規模関連研究(GWAS)によってマッピングされた疾患関連一塩基多型(SNP)の大半は、ゲノムのタンパク質非コード領域に存在しているが、これらの塩基配列バリアントの機能的および機構的役割は確定が難しいことが分かってきた。今回我々は、機能を持つSNPの候補をまず最初に精細マッピングやエピゲノム・プロファイリング、エピゲノム編集によって評価し、次いでゲノム編集技術を用いて同質遺伝子系統を作製した後に表現型特性解析を行うことで、因果的機能を細かく調べる総合的パイプラインについて報告する。この手法の正当性を検証するために、我々は前立腺がんのリスク座位6q22.1を解析し、rs339331が最高スコアのSNPであることを突き止めた。エピゲノム編集から、rs339331領域には調節能があることが確認された。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)によるゲノム編集法を用いて、rs339331にある3種類の遺伝子型(TT、TC、CC)すべてに対応する、同質遺伝子系統の一連の22Rv1前立腺がん細胞株を作製した。リスク対立遺伝子「T」を導入すると、防御的対立遺伝子「C」がホモ接合である細胞株と比べて、調節因子6の遺伝子(RFX6)の転写量が増え、rs339331領域へのホメオボックスB13(HOXB13)の結合が増加し、rs339331領域のエンハンサー付随H3K4me2ヒストン標識の蓄積が増えた。これらの細胞株は細胞の形態や接着にも違いがあり、また、発現量に差異のある遺伝子の経路解析からはアンドロゲンの影響が示唆された。以上のように今回我々は、GWASで見つかった非コード配列バリアントの機能的因果関係の確定に使える広く使いやすい手法を開発し、その有効性を実証した。

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