Technical Report

遺伝子工学:マウスのグルコース恒常性を遺伝子にコードさせたナノ粒子を使って遠隔調節する

Nature Medicine 21, 1 doi: 10.1038/nm.3730

遺伝子発現や細胞活動を一時的に調節する方法は、その基盤となっている生理過程の解明に非常に有用であり、治療にも関係してくると考えられる。今回我々は、低周波の電波(RF)もしくは磁場によって遺伝子発現を遠隔調節する、遺伝子にコード化した系の開発について報告する。まず酸化鉄ナノ粒子を、GFPで標識したフェリチンの重鎖および軽鎖との融合体として細胞内で合成する。このフェリチンナノ粒子は、ラクダ抗GFP抗体とTRPV1(transient receptor potential vanilloid 1)の融合タンパク質(αGFP-TRPV1)と結合し、非侵襲性のRFまたは磁場による刺激を変換してチャネル活性化を引き起こすことができる。また、TRPV1が機械的刺激を変換できることも明らかになった。こうして起こったチャネル活性化の結果として、カルシウム依存性の導入遺伝子発現が開始される。これらの遺伝学的に組み込まれた成分を持つ幹細胞を移植したマウス、あるいはウイルスを使ってこれらの成分を発現させたマウスでは、導入したインスリン遺伝子の発現をRFや磁石によって遠隔刺激してやると血糖値が低下した。このロバストで再現性のあるin vivo遠隔調節法は将来、基礎科学や工学、治療に応用可能だと考えられる。

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