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心疾患:ミトコンドリア複合体Iに含まれるシステインスイッチのS-ニトロソ化による心臓保護作用

Nature Medicine 19, 6 doi: 10.1038/nm.3212

活性酸素種(ROS)の産生増加によって引き起こされる酸化傷害は、心筋梗塞や脳卒中の際の虚血−再灌流傷害の一因である。ROSの増加が起こる機構は知られておらず、このような増加をどうすれば防止できるのかも不明である。多様な一酸化窒素供与体やS-ニトロソ化を起こす化合物は虚血心筋を梗塞から保護するが、その基盤となる機構は不明である。今回我々は、マウスでミトコンドリア選択的に働くS-ニトロソ化化合物MitoSNOを用いて、心筋梗塞後の再灌流を行っている際のミトコンドリアS-ニトロソ化がin vivoで心臓を保護するように働く仕組みを明らかにした。保護作用はNADHからの電子が呼吸鎖へ進入する部位であるミトコンドリア複合体IのS-ニトロソ化によっていることがわかった。複合体Iの可逆的S-ニトロソ化は、虚血組織の再灌流で極めて重要となる最初の数分間にミトコンドリア再活性化を遅らせ、それによってROS産生、酸化傷害、組織壊死を低下させる。複合体Iの阻害は、ND3サブユニットのCys39の選択的S-ニトロソ化によって起こる。Cys39は、虚血後においてのみ修飾を受けやすくなる。我々の結果は、複合体Iの急速な再活性化が虚血−再灌流傷害の重要な病態的特性であることを明らかにしており、システインスイッチの修飾によるこの再活性化の防止は強力な心臓保護機序であって、つまり合理的な治療戦略となることを示している。

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