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血液学:ヒト血小板PAR4の反応性に見られる人種差はPCTPmiR-376cの発現を反映している

Nature Medicine 19, 12 doi: 10.1038/nm.3385

アテローム血栓症の病態生理学的特徴に見られる人種差についてはあまりよく分かっていない。我々は、黒人(n=70)と白人(n=84)の健常被験者で、血小板の機能とトランスクリプトームの検討を行った。PAR4トロンビン受容体が引き起こす血小板凝集とカルシウム動員は、黒人被検者で有意に高かった。発現に差異が見られるPCTP(ホスファチジルコリン転移タンパク質をコードする)などの多数のRNAは、人種とPAR4反応性の両方に関連づけられ、黒人被検者の血小板ではPC-TPタンパク質がより高レベルで発現していた。PC-TPを阻害あるいは枯渇させると、PAR4を介した血小板や巨核球細胞系列の活性化が阻害されたが、PAR1を介した活性化は阻害されなかった。miR-376cは、人種およびPAR4反応性によって発現に差が見られ、PCTPのmRNAレベルやPC-TPタンパク質レベル、PAR4反応性と逆相関していた。miR-376cはヒト巨核球細胞ではPC-TP発現を調節していた。miR-376cなどの、人種やPAR4反応性の違いにより発現に差が見られたマイクロRNAのうち、非常に多くがDLK1-DIO3遺伝子座にコードされており、黒人被検者の血小板でのこれらの発現レベルはより低かった。以上の結果は、PAR4が仲介する血小板活性化に見られる人種による差異の一因がPC-TPであることを示唆しており、人種間で異なる血小板機能の一因がゲノムにあることを示していて、抗血栓剤を開発する際には人種の影響を考慮する必要があることを強調している。

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