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繊維症:αVインテグリンを標的とすることにより見つかった、複数臓器で繊維形成を調節する中核的分子経路

Nature Medicine 19, 12 doi: 10.1038/nm.3282

筋繊維芽細胞は、組織の繊維形成の際に蓄積する細胞外マトリックス成分の主要な供給源であり、肝臓での筋繊維芽細胞の主な供給源は肝臓星細胞(HSC)であると考えられている。今までのところ、これらの細胞を遺伝的に操作するロバストな系は開発されていない。我々は、マウスHSCでPdgfrbプロモーターの制御下にあるCre(Pdgfrb-Cre)が、loxPで挟まれた遺伝子を高効率で不活性化することを見いだした。αVを含むさまざまなインテグリンは複数の臓器で繊維形成の中心的メディエーターであると考えられているため、我々はこの系を使ってαVインテグリンサブユニットをコードする遺伝子を枯渇させた。これにより、マウスは四塩化炭素によって誘導される肝繊維形成から守られたが、β3、β5、β6インテグリンの全身での欠失、あるいはβ8インテグリンのHSC特異的欠失では肝繊維形成は防止できなかった。Pdgfrb-Creは複数の臓器で筋繊維芽細胞を効率よく標的とすることも分かり、この系を使ったαVインテグリンサブユニットの枯渇は肺繊維症あるいは腎繊維症などの臓器繊維症の他のモデルでも繊維形成を防止した。αVを含むインテグリンを小分子(CWHM12)を使って薬理学的に阻害すると、治療として投与された一例も含めて、肝繊維症および肺繊維症の両方が軽減された。以上の結果は、繊維形成を調節する中核経路を明らかにしており、すべてのαVインテグリンを薬理学的標的とすることが、多岐にわたる繊維化疾患の患者の治療に臨床的に有用である可能性を示唆している。

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