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神経変性疾患:EPHA4は筋萎縮性側索硬化症の動物モデルと患者で作用する疾患修飾因子である

Nature Medicine 18, 9 doi: 10.1038/nm.2901

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンに影響が及ぶ致死的な神経変性疾患である。疾患の発症や進行はさまざまであり、生存期間も数カ月から数十年までと幅がある。この多様性の原因となる因子は、治療介入の標的となる可能性がある。我々は、ALSのゼブラフィッシュモデルでスクリーニングを行い、エフリンによる軸索忌避系の受容体であるEpha4が、魚、齧歯類およびヒトでALS表現型の修飾因子であることを明らかにした。Epha4シグナル伝達の遺伝学的阻害や薬理学的な阻害は、ゼブラフィッシュでの変異SOD1表現型を救済し、ALSのマウスやラットモデルで生存期間を延長する。ALSで最も変性を起こしやすい運動ニューロンは、Epha4の発現レベルがより高く、また、軸索が切断された運動ニューロンによる神経筋再支配はEpha4の存在によって抑制される。ALS患者では、EPHA4発現がALSの発症や生存と逆相関し、またEPHA4の機能喪失型変異は長期生存と関連する。さらに、Epha4のノックダウンは、家族性ALSを引き起こすまた別のタンパク質である変異TDP-43(TAR DNA-binding protein 43)の発現によって引き起こされる軸索変性症や、smn1(survival of motor neuron 1)のノックダウンによって引き起こされる軸索変性症(脊髄性筋萎縮症のモデル)も救済することがわかった。このことは、Epha4が軸索変性に対する(運動)ニューロンの脆弱性を包括的に修飾しており、治療介入の新しい標的となる可能性を示唆している。

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