Between Bedside and Bench

腸内の複雑なミクロの世界:腸内微生物相と心血管疾患のつながり

Nature Medicine 18, 8 doi: 10.1038/nm.2895

この世に生まれおちたそのときから、我々の腸内には健康にかかわる細菌が多数棲み着いている。こうした常在菌の構成や個体数が変化すると、免疫系全体に影響がおよび、また、腸管感染症や炎症性疾患、代謝性疾患、がんなどのさまざまな疾患にかかりやすくなることがある。腸のマイクロバイオーム(微生物群ゲノム)は宿主の粘膜とだけでなく、病原体になりうる菌とも相互作用する。恒常性を維持し、有害細菌や疾患から宿主を守るためには、どのような相互作用や経路が重要なのかを解明すれば、腸内微生物相を用いる治療法を開発するための新しい道が開けるかもしれない。BENCH TO BEDSIDEではM R HowittとW S Garrettが、微生物相と宿主の間の代謝的クロストークの、ヒトでの代謝や心血管疾患の発生における重要性について検討している。こうしたクロストークの存在は、何が心血管疾患の発症機序に関与しているのか、またその発症を防ぐために微生物相とそれらが持つ代謝経路をどのように制御すればいいのかといった問題の解明を一層複雑なものにしている。BEDSIDE TO BENCHではN Kamadaたちが、常在菌と腸管疾患の原因菌との間の相互作用を標的にすることが、現在のところ適切な治療法がないと思われているこうした感染症に対する有効な治療法にどのようにつながりうるかを論じている。常在菌が宿主を助けてこれらの病原菌の定着を予防もしくは阻止する仕組みの解明から、命にかかわることもあるこうした腸管感染症に対処するための手段を増やす新しい道筋が見つかるかもしれない。

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