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骨生理学:骨基質のIGF-1は間葉系幹細胞でのmTOR活性化により骨量を維持する

Nature Medicine 18, 7 doi: 10.1038/nm.2793

インスリン様増殖因子1(IGF-1)は、骨基質に最も豊富に存在する増殖因子で、成体期の骨量維持にかかわっている。 本論文では、骨リモデリング過程で骨基質から放出されるIGF-1が、mTOR(mammalian target of rapamycin)の活性化によって、動員された間葉系幹細胞(MSC)の骨芽細胞への分化を促進し、その結果、適切な骨微細構造と骨量が維持されることを報告する。前骨芽細胞のIGF-1受容体(Igf1r)をノックアウトしたマウスは、野生型マウスに比べて骨量や無機物沈着速度が低下していた。さらに、in vitroでCreアデノウイルスによりIgf1rを欠失させたIgf1rflox/floxマウスのMSCは移植後に骨表面に動員されるが、骨芽細胞に分化できなかった。老齢ラットの骨基質および骨髄でのIGF-1濃度は、若齢ラットよりも低いこと、また、IGF-1濃度と加齢に伴う骨量低下との間に直接的な相関が見られることが明らかになった。同様に、ヒトで見られる加齢性骨粗鬆症では、骨粗鬆症患者の骨髄IGF-1濃度は、骨粗鬆症ではない場合よりも40%低いことがわかった。IGF-1とIGF結合タンパク質3(IGFBP3)の投与は、老齢ラットで骨基質のIGF-1濃度を上昇させ、新規の骨形成を促進したが、IGF-1のみの投与ではこのような影響は見られなかったことは重要である。まとめると、これらの結果はIGF-1が成体骨量を維持する機構についての手がかりを与え、またIGF-1を加齢性骨粗鬆症を治療するための治療標的とすることのさらなる論理的根拠を示している。

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