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肝炎:コレステロール吸収受容体のNiemann-Pick C1-like 1はC型肝炎ウイルスの
新しい侵入因子である

Nature Medicine 18, 2 doi: 10.1038/nm.2581

C型肝炎ウイルス(HCV)は世界的に肝疾患の主な原因となっている。感染者はほぼ1億7000万人に上るが、現在のインターフェロンを基盤とする治療は強い副作用があり、有効性も限られていて、より有効な抗ウイルス薬の開発が喫緊に必要とされている。HCVプロテアーゼ阻害剤が米国食品医薬品局(FDA)に承認されたばかりだが、最適なHCV治療には、HIV治療の場合と同様に、HCVの生活環の複数の面を標的とする抗ウイルス薬の併用が必要だと考えられる。ウイルスの侵入は抗ウイルス性介入の多面的な標的となる可能性がある。しかし、HCVの細胞への侵入を阻害するFDA承認薬はこれまでなかった。本論文では、細胞のコレステロール取り込み受容体であるNiemann-Pick C1-like 1(NPC1L1)が治療的介入に使いやすいHCV侵入因子であることを示す。NPC1L1のサイレンシングあるいは抗体を介した遮断によって、細胞培養由来HCV(HCVcc)の感染開始が障害されるので、NPC1L1の発現はHCVの感染に必要である。さらに、FDAで承認されており、臨床での使用が可能なNPC1L1拮抗薬エゼチミブは、in vitroでビリオンと細胞膜の融合前にビリオンのコレステロール依存的な段階を介してHCVの取り込みを強力に阻害する。また、エゼチミブはin vitroで主要なHCV遺伝子型による感染をすべて抑制し、またin vivoではヒト肝臓移植片をもつマウスでHCV遺伝子型1bの感染確立を阻害する。したがって、我々はNPC1L1がHCVの細胞侵入因子であることを同定しただけでなく、新しい抗ウイルス標的および治療薬候補も明らかにした。

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