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血管新生:クラスII PI3Kの1つである内皮PI3K-C2αは血管新生と血管の障壁機能に重要な役割を担っている

Nature Medicine 18, 10 doi: 10.1038/nm.2928

ホスファチジルイノシトール3-キナーゼのクラスIIαアイソフォーム(PI3K-C2α)は、エンドソーム、トランスゴルジネットワークおよびクラスリン被覆小胞に局在するが、その機能的役割は十分に解明されていない。PI3K-C2αを全身あるいは内皮細胞特異的に欠損させると、血管新生過程の出芽の異常や血管成熟異常により、胎生致死となった。内皮細胞でPI3K-C2αをノックダウンすると、PI3-リン酸に富むエンドソーム数の減少、エンドソーム輸送の障害、内皮細胞接着装置へのVE-カドヘリンの送達異常および細胞接着装置の組み立て異常が起こった。PI3K-C2αのノックダウンはまた、血管内皮増殖因子受容体の内在化やエンドソームのRhoA活性化などの内皮細胞シグナル伝達の異常も引き起こした。まとめると、PI3K-C2αノックダウンの影響は、内皮細胞の遊走、増殖、管腔形成および血管障壁健全性の異常を生じる。in vivoで内皮のPI3K-C2αを欠損させると、虚血後および腫瘍での血管新生が抑制され、また血管障壁機能が減弱するとともに、アナフィラキシーに対する感受性の大幅な増強とアンギオテンシンII注入に応答した解離性大動脈瘤形成の発生率上昇が引き起こされた。したがって、PI3K-C2αは、血管形成と血管障壁の健全性に非常に重要な役割を担っており、血管系疾患の新しい治療標的となる。

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