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血液疾患:チュヴァシ赤血球増多症はヘテロ二量体型VHL-SOCS1 E3ユビキチンリガーゼを介するJAK2調節の欠損により引き起こされる

Nature Medicine 17, 7 doi: 10.1038/nm.2370

チュヴァシ赤血球増多症は、VHL(von Hippel-Lindau)遺伝子のホモ接合性R200Wおよび H191D変異によりもたらされる稀な先天性赤血球増多症であり、VHL遺伝子の産物は低酸素誘導因子の主要な負の制御因子である。しかし、エリトロポエチンに対する過敏性などのチュヴァシ赤血球増多症の特徴となる異常のいくつかについては、原因となる分子機構が不明である。今回我々は、VHLがSOCS1(suppressor of cytokine signalling 1)に直接結合して、ヘテロ二量体型E3リガーゼを形成し、これがリン酸化されたJAK2(pJAK2)をユビキチンが介在する分解の標的とすることを示す。対照的に、チュヴァシ赤血球増多症に関連するVHL変異体はSOCS1に対する親和性が変化してpJAK2と作用せず、その分解を起こさない。ヒトのチュヴァシ赤血球増多症を再現する実験モデルであるVhlR200W/R200Wノックインマウスに、極めて選択性の高いJAK2阻害剤TG101209を全身投与すると、疾患表現型が元に戻る。以上の結果は、VHLがJAK2の負の制御因子でSOCS1と協働していることを示しており、チュヴァシ赤血球増多症患者でのJAK2を標的とする治療に生化学的、前臨床的裏付けを与えている。

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