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高血圧:食塩感受性高血圧における腎臓βアドレナリン作動性−WNK4シグナル伝達経路のエピジェネティック制御

Nature Medicine 17, 5 doi: 10.1038/nm.2337

高食塩摂取が血圧を上昇させる仕組みの解明は、高血圧症研究の重要な課題である。食塩摂取は腎交感神経活動の活性化を誘発し、ナトリウム貯留を惹起する。しかし、腎臓におけるナトリウム排泄の交感神経性制御の基盤となる機序はいまだに明らかにされていない。我々は、β2アドレナリン受容体(β2AR)の刺激は、ナトリウム再吸収の調節因子であるWNK4をコードする遺伝子の転写を抑制することを見いだした。β2ARの刺激は、ヒストンデアセチラーゼ8活性をサイクリックAMPに依存的に阻害し、ヒストンアセチル化を亢進させ、その結果としてプロモーター領域に存在するnGRE(negative glucocorticoid-responsive element)へのグルココルチコイド受容体の結合を増加させる。交感神経の過緊張を伴う食塩感受性高血圧ラットモデルでは、食塩負荷によって腎臓のWNK4の発現が抑制された結果、Na+-Cl-共輸送体の活性化が惹起され、食塩に依存的な高血圧が誘発された。これらの知見は、食塩感受性高血圧の発症にWNK4転写のエピジェネティックな制御が与していることを示している。腎臓のβ2AR-WNK4シグナル伝達経路は、食塩感受性高血圧の治療標的となる可能性がある。

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