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精神疾患:GIT1はヒトのADHDやマウスのADHD様行動と関連している

Nature Medicine 17, 5 doi: 10.1038/nm.2330

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、学齢期小児のほぼ5%にみられる精神疾患だが、ADHDの原因となる機序はほとんどわかっていない。本論文では、ヒトのGIT1(G protein-coupled receptor kinase-interacting protein-1)とADHDの間に、これまで明らかにされていなかった関連性があることを報告する。GIT1のイントロンに存在する一塩基多型の1つでGIT1の発現を低下させるマイナーアリルはヒトのADHD感受性と強い関連性を示す。Git1欠損マウスは、多動、脳波シータ波の増強、学習および記憶の障害などの特徴を持ち、ADHDに類似した表現型を示す。Git1−/−マウスでみられる多動は、ADHD治療薬として一般的に用いられている精神刺激薬アンフェタミンおよび塩酸メチルフェニデートによって鎮静化される。さらに、アンフェタミンはシータ波増強および記憶障害を正常化する。マウスでのGIT1欠損は、RAC1(ras-related C3 botulinum toxin substrate-1)シグナル伝達およびシナプス前入力抑制の低減を引き起こし、またシナプス後部ニューロンで、ニューロンの興奮‐抑制バランスを興奮側へ移行させる。この研究は、ヒトADHDに対するGIT1の今まで知られていなかった関与を明らかにし、またGIT1欠損マウスが精神刺激薬反応性ADHDに類似した症状を呈することを示している。

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