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生殖障害:子宮内膜の血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼSGK1の脱調節は生殖障害の原因となる

Nature Medicine 17, 11 doi: 10.1038/nm.2498

不妊症および不育症(RPL)は広く見られるが、詳細な研究が行われているにもかかわらず、個々の生殖障害の原因はわからない場合が多い。黄体中期子宮内膜検体の解析から、原因不明の不妊症では、上皮でのイオン輸送および細胞生存にかかわるキナーゼであるSGK1の発現が増加し、管腔上皮でそれが最も顕著だが、RPL女性患者の子宮内膜ではSGK1発現が低下していることが明らかになった。この知見の機能的重要性を確認するために、我々はまず構成的に活性化している変異型SGK1をマウス子宮管腔上皮で発現させた。これによって、子宮内膜の受容性遺伝子の一部の発現が阻害され、子宮液の状態に異常が生じ、胚の着床が根絶した。これに対して、Sgk1–/–マウスでは着床は妨げられなかったが、妊娠ではしばしば脱落膜-胎盤の境界面からの出血を併発し、胎児の成長遅延とそれに続く死亡が見られた。野生型のマウスと比較して、Sgk1–/–マウスは酸化ストレス防御に関与する遺伝子の妊娠依存性誘導が大幅に阻害されていた。SGK1が比較的少ないことは、RPLを有するヒト被験者由来の脱落膜化間質細胞の特徴でもあり、これらの細胞は酸化ストレスによる細胞死に高い感受性を示す。したがって、周期性を有する子宮内膜で、特定の細胞区画でのSGK1活性が脱調節していることは、胚の着床を妨害して不妊症につながり、あるいは胎児-母体間の境界面で酸化傷害が起こりやすくすることによって妊娠合併症の素因となっている。

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