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肺疾患:甲状腺ホルモン受容体の抑制はI 型肺胞
細胞関連呼吸窮迫症候群に関係する

Nature Medicine 17, 11 doi: 10.1038/nm.2450

肺は空気呼吸する動物の決定的な特徴だが、ガス交換を仲介するI型肺胞上皮細胞の形成を制御する経路はほとんど解明されていない。対照的に、グルココルチコイド受容体とそのリガンドがII型肺胞上皮細胞の成熟を促進することはずっと以前から知られており、グルココルチコイドの出生前投与は、新生児呼吸窮迫症候群(RDS)の重症度を軽減するために広く使用されている。本論文では、C57BL/6マウスで核コリプレッサーであるSMRT(silencing mediator of retinoid and thyroid hormone receptors)のノックイン変異を起こすと(SMRTmRID)、未成熟なI型肺胞細胞が原因となって、これまで未知の呼吸窮迫症候群が発症することを示す。SMRT誘発性RDSは、グルココルチコイドには反応しないが、抗甲状腺ホルモン剤(プロピルチオウラシルあるいはメチマゾール)処理によって完全に回復する。このことは、肺の発生に甲状腺ホルモン受容体(TR)がこれまで知られていなかった重要な役割を担っていることを示唆している。TRおよびSMRTは、Klf2を介してI型肺胞上皮細胞の分化を制御すること、Klf2はさらにI型肺胞細胞の遺伝子プログラムを活性化するらしいことがわかった。逆に、肺のKlf2を欠損するマウスは成熟I型肺胞細胞を欠いていて出生直後に死亡し、SMRTmRID表現型をよく再現している。これらの結果は、TRが肺発生、特にI型肺胞細胞の分化に関与する第2番目の核内受容体であることを明らかにしており、またグルココルチコイドに反応しないRDSの新しい治療選択肢を示唆している。

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