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リンパ管新生:選択的スプライシングを受けた血管内皮増殖因子受容体2はリンパ管新生に対する重要な内因性抑制因子である

Nature Medicine 15, 9 doi: 10.1038/nm.2018

血管新生やリンパ管新生を司るさまざまな調節分子のバランス崩壊は、多くの疾患の発症につながりうる。血管新生に対する内因性の抑制因子は数多く同定されてきたが、リンパ管新生に対する内因性の選択的抑制因子は、我々の知るかぎりでは、これまで明らかにされていない。我々は、血管内皮増殖因子受容体2(Vegfr-2)をコードする遺伝子に、可溶性Vegfr-2(sVegfr-2)と名付けられた分泌型のタンパク質をコードするスプライス変異体が存在し、この可溶性受容体がVegf-cの機能抑制により、発生過程や修復過程のリンパ管新生を阻害することを報告する。sVegfr-2を組織特異的に欠損させたマウスでは、血管形成には影響がみられないが、本来的には無リンパ管組織である角膜に出生時から自発的なリンパ管浸潤をきたし、また皮膚でもリンパ管過形成が起こる。縫合糸誘導角膜血管新生モデルやマウス角膜移植モデルでは、sVegfr-2の投与によってリンパ管の新生は抑制されたが、血管新生は抑制されず、角膜同種移植片生着が促進され、リンパ管腫細胞の増殖が抑制された。したがって、内因性に発現するsVegfr-2は、血液とリンパ管の間における脱共役剤の役割を果たす。sVegfr-2を制御すれば、リンパ管形成異常や移植拒絶反応に対して治療効果が期待され、また腫瘍リンパ管新生やリンパ浮腫に対しても効果があると考えられる。

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