Letter

肥満/免疫:マスト細胞の遺伝的欠失や薬理学的安定化はマウスで食餌誘発性肥満と糖尿病を軽減させる

Nature Medicine 15, 8 doi: 10.1038/nm.1994

マスト細胞の機能は従来アレルギー応答と関連付けられてきたが、最近の研究では多発性硬化症、関節リウマチ、動脈硬化、大動脈瘤やがんなどの一般的な疾患にもかかわっていることが示されている。本論文では、マスト細胞が食餌誘発性肥満と糖尿病の一因でもあることの証拠を提示する。たとえば、肥満のヒトおよびマウス由来の白色脂肪組織(WAT)は、やせたヒトおよびマウスのWATに比べてより多くのマスト細胞を含んでいる。さらに、西欧型食餌で飼育されたマウスでは、マスト細胞の遺伝的欠損あるいは薬理学的安定化が体重増加を抑え、血清とWATで炎症性サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼ濃度を低下させて、これと協調してグルコース恒常性とエネルギー消費が改善する。機序の検討から、マスト細胞がWATと筋肉の血管新生、それに関連する細胞のアポトーシスとカテプシン活性に関与することがわかった。サイトカイン欠損マスト細胞の養子移入実験では、これらの細胞がインターロイキン6とインターフェロンγ産生によりマウス脂肪組織のシステインプロテアーゼであるカテプシン発現、アポトーシス、血管新生に関与し、その結果食餌誘発性肥満と耐糖能異常を促進することが示される。臨床で使用可能なマスト細胞安定化薬を投与したマウスでは肥満と糖尿病が減少することを示す我々の結果は、このような一般的なヒト代謝疾患に対する新たな治療法開発の可能性を示唆している。

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