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心血管疾患:シクロフィリンAは血管壁酸化ストレスを増幅しアンジオテンシンIIによる大動脈瘤形成を促進する

Nature Medicine 15, 6 doi: 10.1038/nm.1958

炎症と酸化ストレスは多くの疾患の発症にかかわることが示されているが、治療標的分子の同定は遅れている。血管壁炎症とマトリックス分解は、腹部大動脈瘤(AAA)形成の必須要素である。シクロフィリンA(CypA、Ppiaによってコードされる)は、血管平滑筋細胞(VSMC)に強く発現し、活性酸素種(ROS)刺激により細胞外へ分泌される炎症促進性タンパク質である。我々はApoe−/−マウスのアンジオテンシンII(AngII)によるAAA動物モデルを用い、Apoe−/−Ppia−/−マウスでは、Apoe−/−Ppia+/+マウスとは対照的に、AngIIによるAAA形成がまったく起こらないことを報告する。Apoe−/−Ppia−/−マウスでは、炎症性サイトカインの発現、弾性板分解ならびに大動脈拡大が減弱した。これらの特徴は、Ppia+/+マウス由来の骨髄細胞で骨髄置換しても不変であった。VSMC細胞内のCypAおよび分泌された細胞外CypAはともに、ROS産生およびマトリックスメタロプロテイナーゼ2活性化に必須であるという機序が示された。これらの結果は、CypAがAAA形成において果たす、これまで知られていなかった役割を明らかにし、CypAが心血管疾患治療の新たな標的分子になりうることを示唆している。

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