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筋疾患:シアル酸代謝物による予防治療は、DMRV-hIBMモデルマウスのミオパチー発症を抑える

Nature Medicine 15, 6 doi: 10.1038/nm.1956

縁取り空胞をともなう遠位型ミオパチー(DMRV)‐遺伝性封入体ミオパチー(hIBM)は、成人発症型で、緩徐に進行する常染色体劣性遺伝のミオパチーで、発症後は最終的に車椅子生活となる。この疾患は、臨床的には骨格筋の委縮および筋力低下、病理学的には縁取り空胞を特徴とし、後者は自己貪食空胞の蓄積、小角化繊維の散在、細胞内へのアミロイドその他のタンパク質の蓄積を認める。現在この衰弱性ミオパチーには有効な治療法がなく、この疾患の発症機序が不明であることが、その主な理由である。DMRV-hIBMの原因となる疾患遺伝子は、シアル酸生合成に必須の2つの酵素であるグルコサミン(UDP-N-アセチル)-2-エピメラーゼおよびN-アセチルマンノサミンキナーゼをコードするGNEであることが知られている。しかし、GNEはシアル酸生合成以外にも役割をもつことが報告されているため、シアル酸産生低下が筋変性を引き起こすかどうかは依然として明らかではない。我々は、DMRV-hIBMのモデルマウスにシアル酸代謝物を経口投与すると、骨格筋の委縮および筋力低下を完全に予防できることにより、シアリル化の低下がDMRV-hIBMの病因にかかわる重要な因子の1つであることを示す。これらの結果は、シアル酸の投与によりDMRV-hIBMの治療が可能であるという説を裏づけており、この治療戦略は将来臨床試験に適用できる可能性がある。

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