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免疫不全症:白血球接着不全症III型はインテグリン活性化に影響を及ぼすKINDLIN3の変異が原因である

Nature Medicine 15, 3 doi: 10.1038/nm.1931

インテグリンは白血球と血小板の主要な接着受容体である。白血球のβ1、β2インテグリンの機能は良好な免疫応答にきわめて重要であり、血小板のインテグリンαIIbβ3はフィブリノーゲンへの結合を介して血液凝固過程を開始する。循環中の細胞のインテグリンはリガンドにほとんど結合しないが、他の細胞膜受容体を介する「細胞内から外への」シグナル伝達の後で活性化される。白血球接着不全症1型(LAD-I)患者は、β2サブユニットを指定する遺伝子の変異のために、β2インテグリンを発現せず、細菌感染を繰り返す。αIIbβ3インテグリンに影響を及ぼす変異は、グランツマン血小板無力症と名づけられた出血性疾患を引き起こす。LAD-III患者はLAD-Iとグランツマン血小板無力症の両方の症状を示す。LAD-III患者の造血系由来の細胞はβ1、β2、β3インテグリンを発現するが、細胞の内から外へのシグナル伝達の障害により免疫不全と出血症状を呈する。LAD-IIIの病変はcalcium and diacylglycerol guanine nucleotide exchange factorをコードする遺伝子(CALDAGGEF1、公式名はRASGRP2、CALDAG-GEF1タンパク質を指定する)のC →A変異が原因と考えられていたが、本論文ではこの変化がLAD-III疾患の原因ではないことを明らかにする。我々は、KINDLIN-3タンパク質を指定するKINDLIN3(公式遺伝子名FERMT3)遺伝子の変異がマルタ人およびトルコ人LAD-III患者の原因であることを突き止めた。2つの別個の変異の結果として、KINDLIN3メッセンジャーRNA量が減少し、タンパク質発現が起こらなくなる。患者リンパ球にKINDLIN3 cDNAを形質導入するとLAD-IIIの障害が正常化され、リンパ球のインテグリン介在性接着と移動が回復するが、CALDAGGEF1 cDNAの形質導入では正常化しないことは重要である。

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