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がん:c-Abl-TAp63経路の阻害はマウス卵母細胞を化学療法が誘発する細胞死から守る

Nature Medicine 15, 10 doi: 10.1038/nm.2033

生殖細胞は遺伝毒性物質に対して感受性であり、卵巣機能不全と不妊は若年がん患者における化学療法の主要な副作用である。今回我々は、ヒトのモデル細胞株とマウス卵母細胞でのDNA損傷性化学療法薬によるc-Abl-TAp63経路活性化と、それが細胞死に果たす役割について報告する。細胞株では、シスプラチン投与によりc-AblがTAp63の特定のチロシン残基をリン酸化する。このような修飾はp63の安定性に影響を与え、アポトーシス促進性プロモーターのp63に依存した活性化を引き起こす。卵母細胞でも同様に、シスプラチンはTAp63の蓄積を迅速に促進し、最終的に細胞死を引き起こす。c-Ablキナーゼ阻害薬イマチニブの投与は、このようなシスプラチンが誘導する影響を無効にする。これらのデータは、DNA二本鎖切断により開始されるシグナル伝達がc-Ablにより感知され、c-Ablのキナーゼ活性を介してp63の転写結果が変化するというモデルを裏付けている。さらに、今回の結果から、濾胞に貯蔵されている卵母細胞の化学療法中の保護を目的とするイマチニブの新たな使用法が考えられる。

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